05番外編「故郷、新湊の旅」
ぼくの出身地は「東京」だ。
東京で生まれ、東京で育ちました。
しかし、父も母もじいちゃんもばあちゃんも生まれは富山県の新湊で、家族の中で唯一ぼくだけが東京出身で、血は完全に富山の人間なのに東京がじぶんの故郷だということに、変な違和感を感じながら日々を生きてきました。
お盆や年末年始は友達が実家に帰っていたけれど、ぼくはそういう機会もなく東京にいたので、毎年その時期になると妙な寂しさを感じていました。この感覚は東京出身の人と話すと分かち合えることがよくあります。
今回、富山を旅するということで、せっかくだから約20年ぶりに家族の故郷である新湊に寄りたいと思い、行かせてもらうことができました。
新湊に到着すると、うっすらとその記憶が動き出します。
ただ、自分の記憶では本当に小さな町で、漫画で見るような「THE
田舎」みたいな、あんまりパッとしない町を想像してしまっていたのだけれど、町を歩けば歩くほど、いい空気が流れる豊かでいい町だということを感じることができました。
不思議でした。
この町で育ったわけでもないし、愛着があったわけでもない。けれど「ぼくの家族はここで育ったのか」、そう思うだけで、言葉にできない感慨深さがあり、小さな記憶のかけらを拾い集めるたびに、この町が大好きだという感情と、居心地の良さも一緒に増えていきました。そして、この町を歩くのが一歩ずつ楽しくなっていきました。
家族から話を聞いていた「スパロー」というラーメン屋さんがあった。
このラーメン屋さん、「カレー中華」が有名で、これだけメニューがあるのにお客さんのほぼ9割がカレー中華。そうなると逆にほかメニューも気になってしまうけど、そこは素直にカレー中華を注文!
ウォ〜。見た目は「うまそう!」と言えるほどでもない(笑)。シンプルに言えば、カレーうどんのラーメン版ですね! それ以上でもそれ以下でもないのだけれど、ただただ、こいつがやみつきになります。ぼくが昔食べたことがあるのかどうかはわからないけれど、なぜか懐かしい味がしてしかたがありませんでした。こういう地元のお店、憧れるんですよね。今、この原稿を書いているこの瞬間も、妙にカレー中華が食べたくなってしまっています。
月並みな言葉ですが、やっぱり故郷があるって幸せなことだと思いました。
ぼくにとって新湊は、まだ上手に「ただいま」とは言えない故郷だけれど、それでも自分が故郷だと思えたのであれば、故郷でいいじゃないかと純粋に思えたのでありました。
今は、「ぜひ新湊にきてくださいね!」その気持ちでいっぱいです。
それと同時に、より「東京」が好きになりました。ぼくの本当の故郷は東京なのだから、もっと東京を愛して、東京を楽しみたいと思ったのです。
このご時世、いろんな人が帰郷できなかったり、地元を楽しめなかったり、あらゆるじれったさを感じているかと思います。だからこそ、明るい未来が訪れたとき、ぜひ故郷を楽しんでもらえたらと思います。それもひとつの「Enjoy Outing!」なのではないかと、そう思えた富山の旅でした。
故郷って、最高!