DAY1 12:00〜15:00
入店するといたるところに書かれた「黙食」。女将さんからも「黙食でお願いします」と念を押され。これはいよいよひと言も発してはいけないという空気が店内に漂いました。
ランチメニューの定食はたったの3つ。「お刺身盛り合わせ」「カレイの煮付け」「天ぷらの盛り合わせ」。カウンターのみの老舗感漂う雰囲気。3つとも期待のできる選択肢だが、相談しずらいやや重めの空気感。オーダー決断への道のりはまさに試練そのものでありました。
僕は直感を信じ「カレイの煮付け」を選択。続いて、隣のキヨコさんが「刺身の盛り合わせ」。ほぼ同時に入店したお隣の女性ふたりが「刺身の盛り合わせ」と「刺身の盛り合わせ」。
内心「しまった」と思いました。そりゃそうだよな、海沿いの町なのだから新鮮な刺身がいいに決まっている。そんな、ごく単純な思考回路が働かなかった自分を悔やみました。
そのあとも、言葉を発せずに、黙々と定食がくるのを待っていたのですが、ひとつ気になることがありました。先ほど厳しそうな口調で「黙食」とおっしゃっていた女将さんが、ガンガンに話すのです。厨房の旦那さんであろう料理人と痴話喧嘩がはじまり、その声だけがBGMなんぞあるはずもない店内に響きわたります。きっとこの光景は今にはじまったことではない、毎日行われている行事のようなものだということを、カウンターに座る全員が悟ったのでありました。
しばらくして例のアレがやってきました。あまりに美味しそうで「うまそう!」という声がおもわず漏れてしまったほどです。そして、あまりに美味しそうで隣の3人から「しまった、カレイの煮付けだった」という心の覇気が僕の右肩に襲いかかりました。
女将さんから「うちの秘伝のタレで煮付けてるんです」と説明が入り、隣の3人から「その情報、どっかに書いておいてよ!」という心の覇気が女将さんへではなく、またしても僕の右肩に突き刺さりました。
その覇気を感じてしまっては、さすがに知らんぷりはできず、すごく小さな声で「ひとくち入りますか?箸つけてないので」とお裾分けを試みました。しかし女性ふたりは小声で「いえ、大丈夫です」と返答し、続けて女将さんに向かって「カレイの煮付け定食、ごはんと味噌汁抜きください」とまさかの追加オーダーしたのです。
さすがに驚きました。とんだ食いしん坊です。あとから来た刺身たちを見ると、ちょっとスネているようにさえ見えました。
カレイの煮付けは案の定、最高にデリシャスな絶品。無事にお隣さんにも提供されたので、「よかったですね」の意味を込めて笑顔を送ると、こちらに向かって親指を立て、「グー!グー!」ってジェスチャーしてくるんです。思わずDA PUMPのUSAかと思いましたよ!
その光景が脳から離れず、先にお店を出た僕たちはお隣のおふたりを出待ちし、声をかけてみることにしました。そして、浜辺へ一緒に散歩をしながらいろんな話をしました。カレイの煮付け話からはじまり、東京から日帰りでいらっしゃったふたりはママ友の形で出会い、お子さんが大きくなった今でも支え合う関係でいるということ。そのことを知り、持つべきものは友だと強く感じたのでした。
いやはや、最初の出会いから出来すぎてるだろうと思いながら、おふたりとサイコロ旅に感謝し、次の目的地のためにサイコロを振ってもらいました。
「2」!
ということで、「静岡」に向かいます。
もうすこし進みたかったのが正直なところですが、おふたりに託した運命を信じ、再びハンドルを握るのでした。
(つづく)
Photo Gallery
本編に収まり切らなかった、
旅の写真を余すことなくお楽しみください。
DAY1 12:00〜15:00
今治に到着したゾノ先輩ときゃなこは、駅前のレンタサイクルを発見。欲望に純なふたりは即座にお店へと駆け込み自転車をGET!
今回のふたりへのお題は「おそロゴスをしながら進むべし」。というわけで、レンタサイクルの案内してくれた小林さんと早速の「おそロゴス」!
一緒に持ってくれた2023年の新製品「タオルてぬぐい」は、今治タオルっぽいからということでチョイス!(今治タオルというブランドではないですが、ちゃんと今治産のタオルです!)
「近所のおじさんみたいにいい人だった!」と、ふたりがうれしそうに語ってくれましたが、それ以上の情報はなく、この写真から溢れ出る「小林さん=いい人」を存分に感じていただけたらと思います!
そしてふたりは自転車で、しまなみ海道を風の如くひたすら無邪気に駆け抜けました。
しまなみ街道は瀬戸内海に浮かぶ島々を橋で結び、今治から広島県の尾道へとつながっています。その道なんと60km。
「2日ぐらい滞在してゆっくり横断したかった」と後にふたりが語るほど、最高の景色と体験だったとのこと。しかし、そんなにゆっくりとしていてはLOGOS PARKで待ち合わせができぬということで、最初の橋の手前で引き返すこととなりました。
記念撮影をする際、きゃなこが真面目なトーンで発した
「しまなってますね」
……おそらく「楽しいですね」を言いたかったのではなかろうかと思うのだが、ゾノ先輩はその意味を一瞬で理解できてしまっているのか目立ったツッコミは特になく、自然な流れで次へと進むサイコロをきゃなこが振り始めるのでした。
出た目は「6」!!!
まわりの人が「なんだ?なんだ?」とざわつくほど歓喜をあげ、
「私、天才!」
と、運も見事に手柄へと変えるきゃなこ。
そうしてふたりは、次の行き先「丸亀」へと向かったのでありました。
(つづく)
DAY1 12:00〜15:00
今回のサイコロ旅で熊本には絶対に行きたいと願っていた写真家の関暁。サイコロの目がジャストで熊本になったことで、ひとり興奮する関暁。電車の中では熊本名物「馬刺し」を想像していたので、下車してすぐに馬刺しの仕入れのため売店へと向かいました。
「熊本どうでした?」の問いに対し、「人よりくまモンのほうが多かった」と、ちょっと大袈裟に語ってくれたのですが、そう言いたくなるほど「くまモン」の人気はやっぱりすごい!
くまモン
くまモン、くまモン、くまモン、
くまモン!
どこもかしこも「くまモン」!
熊本城にも行こうと思っていた関さんでしたが、天気があまり良くないため、行くのを諦めました。
後日、どうしても行きたかった悔やみなのか、この1枚の写真を編集長の僕に見せながら「気持ちは熊本城に行ったんだ」と何度も力説され、「ネットで画像検索しただけで行った気になるな!」と、会社の上司が部下に指導している姿はニュースや巷で見たことがあるけれど、「熊本駅にある熊本城の絵を見ただけで行った気になるな!」とは関さんに言うことはできず、人には様々な旅の考え方があるんだなということで飲み込むことにしました。
関暁は熊本を楽しむか、はたまた先に進むかで悩んだのち、今回は中途半端に楽しむよりも、また来る機会を楽しみにしよう。だって、馬刺しを買えたんだモン。そんな決断をし、熊本で再びサイコロを転がしました。
出た数は「3」。つぎの目的地は「博多」。
主要都市が次々に出て、またしても心の中で超絶はしゃぐ関暁。ご褒美と言わんばかりに「くまモンのワンカップ」を呑みながら博多へと向かった関暁でした。
隣の席にたまたま座った高校生の男の子に話しかけると、彼ははじめての新幹線でドがつくほどの緊張をしていたそう。どうやら就活に向かっているところだったらしく、関暁はサイコロ旅の運を彼に分け与え、エールを送りました。
彼からすれば、ド緊張のなか、サイコロとMAPを出して、さらにくまモンのワンカップを呑んでいるおじさんに突然話しかけられ、より緊張したことでしょう(笑)。月刊LOGOS一同、彼の幸運を願います!
さぁ、博多では、どんな出会いが待っているのか。関暁のサイコロひとり旅は、まだまだつづく。
(つづく)