01フジロッカーのプレイリスト
今回の企画は、曲を聴いてもらいながら記事を読んでもらいたい! ということで早速ではありますが、フジロッカーの<この1曲!>を集めたSpotifyのプレイリストを冒頭から公開します。1曲目から順に流しても、シャッフルでも、コメントとともに1曲ずつ聴いても。お好きなように楽しみください。
さあ! 今年もここ、新潟県の苗場スキー場にやってきました。
果たしてどんな人、どんな音楽との出会いがあるでしょうか?
ワクワクしながら入場ゲートをくぐります。
RED MARQUEE
まずは入り口に一番近いステージ、レッドマーキーへ。
フレッシュなバンドからDJ、ヒップホップ勢など多種多様なアーティストが出演する通称「マーキー」。
他のステージが夜になると閉まるなか、ここは朝までやっているので多くの若者が集まります。
さあ、フジロッカーの<この1曲>。じゃんじゃん聞いていきますよ〜。
1組目は、フィッシングベストで揃えたチーム・フリースマイルマンのみなさん。
「たまたまかぶりました! …いや、若干打ち合わせしました(笑)」と笑う3人は、新潟からやってきました。
イチオシはモンゴル出身のバンド、ザ・フー。つい先ほどライブを見て、大ファンになってしまったのだとか。
モンゴルの伝統的な歌唱法・ホーミーと、馬頭琴(ばとうきん)などモンゴルの楽器を織り交ぜながらのライブは「音波が迫ってきた、迫力がやばかった!」「ホーミーは“口から音源”って感じ」「モンゴルにいるかと思った!」と、それはもうすごかったそう。「帰りの車でホーミー練習しよ!」と興奮気味な3人でした。
ちなみにチーム・フリースマイルマンの名前の由来は、写真右側のフリースマイルマンさん。”生きるいらすとや”を目指し、インスタで自身のフリー笑顔素材を公開中です。
「素材としてなんにでも使ってください!」とのこと。気になった人はアカウントもぜひチェックを。
@free_smile _man
お次はキュートな母子です。モデルのYUKAさんと羽麗ちゃん(11ヶ月)。
「旦那と喧嘩してフジロックに家出中です!(笑)」とのこと。その行動力に脱帽です。
そんなYUKAさんの<この1曲!>は、アメリカのフォークバンド、ザ・ルミニアーズの『Sleep On The Floor』。どこか懐かしく、メランコリックな音に癒やされる曲です。
「ランニングや散歩してるときによく聴いてます。とにかく心地良い曲。MVも、儚い青春の1ページって感じですごく素敵なんです」
前夜祭と初日に参加してお家へ帰るそう。旦那さんと仲直りできるといいですね!
鮮やかな髪色とサングラスで、どことなくツインズ感があるニワさんとタイラさん。
ふたりがおすすめとして挙げたのは、初日のWHITE STAGEのトリを飾ったボノボ。繊細で美しいダンス・ミュージックが世界中から支持されていて、日本でも長らく人気のアーティストです。
「『Age of Phase』っていう曲が大好きです。夜に聴くとめちゃくちゃ気持ちいい。バイト帰りに湘南の海沿いを自転車に乗って帰るんですけど、その時に聴いてます。もうドンピシャです!」(写真左・タイラさん)
さて、少し足を伸ばしてグリーンステージへと参りましょう。
GREEN STAGE
フジロックのメインステージであるグリーンステージ。約4万人と、ドーム級の収容人数を誇ります。スクリーンの大きさも演出の豪華さもダントツで、これまで錚々たるミュージシャンが伝説のライブを披露してきました。
広々とした気持ちのよい空間です。
海外のお客さんに会えると、「いつものフジロック」を感じますね。
アメリカから来たトムさんとドイツ出身のクリスさんが口を揃えておすすめするのは、スーパーオーガニズム。多国籍バンドらしい自由で遊び心あふれるポップなサウンドは日本にもファンが多く、星野源さんやCHAIさんなど日本のアーティストも参加している楽曲もあるので、邦楽好きにもおすすめです。
ふたりが挙げた1曲は、スーパーオーガニズムといえばのアンセム曲『Something For Your M.I.N.D.』。
「スキーしてるときにイヤホンで聴いてるんだけど、最高なんだ! みんなもスキーするとき聞いてみて! いい? スキーの時だよ!」となぜかスキー推し。承知しました!
それはそうと、みなさん。
トムさんとクリスさんの後ろにいた人…気になりませんでしたか?
グリーンステージで大きすぎるエアベッドを相棒のごとく引きずっていたこの男性。
かと思えば、ORANGE RANGEのライブでそのベッドをほっぽり出して前方へと攻めていき、観客と絡みまくっていた男性。グリーンステージでとにかく目立っていました。
声をかけてみました。
韓国生まれ、日本在住3年目のジョンさん。
さぞかし熟年のフジロッカーかと思いきや、フジロック初参戦のお方でした。
初フジロックのお目当ては、大好きなロックバンド、ザ・ホワイト・ストライプスの元ギターボーカルであるジャック・ホワイト。
ということで挙げてくれた<この1曲!>も、同バンドの『Seven Nation Army』。
ライブでイントロが流れた瞬間に会場が湧く、間違いなしの1曲です。
バンドはすでに解散していますが、「ホワイト・ストライプスは日本だけに行くバンドだったんです。韓国には一度も! こなかった!」と歯噛みする姿に、積年の愛を感じました。
とにかく、おっきい。
「空気しかないので軽いですよ。でも、テントに入らない…」とつぶやきながら、グリーンステージを去るジョンさんでした。
フジロックのオフィシャルTシャツ&バッグと、「前夜祭で勝ち取った!」というタオルを下げたリンクコーデが目を引いた、もえみさんとななえさん。
ふたりのおすすめはBLACKPINKと日本のヒップホップ勢。「どっちがいいかな〜!」と相談して選んだのは、ラッパーKID FRESHINOのメロウな楽曲『by her feat.茂千代』でした。
「なんだか懐かしい。夜になりかけの夕方って感じの曲。とにかく浸れます!」
地元・湯沢から参加したふたりは保育園からの幼馴染だそう。大人になってもずっと仲良し。最高ですね!
取材班はさらに奥地へ。グリーンステージからホワイトステージへと移動します。
ちなみに開催期間の7月28〜31日は全国的な猛暑日。苗場ももれなく暑かった!
WHITE STAGE
ホワイトステージは、グリーンの次に大きなステージ。
とは言え、グリーンに負けず劣らず人気のアーティストが立つステージでもあります。
グリーンよりもさらに幅広い音楽ジャンルのアーティストが出演するのも特徴。
ホワイトステージでハントしたのは、Ayumi Nakamuraさんとミラーレイチェル智恵さん夫妻。
Ayumiさんはミュージシャン、智恵さんは映像作家というクリエイターカップルです。ふたりがおすすめに挙げてくれたのは、Ayumiさん自身の最新曲『Little Lights』。
Ayumiさんに「懐かしいような新しいような、流れるような曲」と教えてもらい、その場で聴かせてもらうと…説明の通り、たゆたうような心地よい音が流れてきました。身を委ねたくなるような気持ちよさです。
さらに智恵さんが制作したというMVを見せてもらったところ、それがまたすごく良い! よければプレイリストを一瞬止めて、MVをご覧ください。
「この曲の“流れる”っていうテーマに合わせて、MVは川で撮ろうと思いました。それと、この曲が収録されているアルバムタイトル『Strata(ストラータ)』が“地層”という意味なので、撮影場所は地層が見える埼玉の長瀞(ながとろ)を選びました」と智恵さん。
ミュージシャンのMVを撮ることも多いという智恵さんに「今までにどんなMVを撮られたんですか?」と尋ねると、「RADWIMPSの『猫じゃらし』とか…あいみょんの『ハート』とか…」と、知ってる作品名が出てくる出てくる。
音楽と映像というジャンルで活躍するふたりのクリエイティビティがぎゅっと詰まった『Little Lights』、要チェックです。
ここでちょっと余談。
ホワイトステージはまれに入場規制がかかるほど人が集まるアーティストがいるのですが、
今年大盛り上がりだったのは…マーチンこと、鈴木雅之さん!
ぱんっぱん!
『違う、そうじゃない』『恋人』『め組のひと』『ランナウェイ』、さらにはYOASOBIや槇原敬之、RCサクセションのカバーまで。
すべてがメイン曲。すべてが名曲。
涙がちょちょぎれそうなセットリストで入場規制待ったなしでした。
フジロックの名物キャラ、パンダマンもマーチンを聴きに来ていました。
2021年のフジロック特集と同じポーズをしてくれたパンダマン。
お久しぶりです! 1年ぶりですね。
「さっき『恋人』を聴いてて悲しかったのが、10年前に別れた恋人を思い出しそうになったんですね。でも、その顔がどうにも浮かばなくて…。恋人というもの自体から、自分がだいぶ離れた存在になってしまったんだなって気づきました」と、曲を聴いてセンチメンタルな気持ちになってしまったようです。
音楽の話で気分を紛らわそうと、パンダマンにも好きなアーティストを聞いてみました。
「そうですね〜。色々いますけど、今年の出演者ならボノボです。2018年の単独ライブで買ったTシャツに、2019年にDJで来た時にサインしてもらったんですよ。1年ごしで!」と思い出を語る声は明るく、『恋人』のダメージも多少は軽減された模様です。
「おすすめしたい曲は『Kerala』。夢や希望に打ちひしがれてる時に、いい意味でなにも感情を動かさないでいてくれる音なのがよくて。けど、そんなことを思ってると後半から上がっていくんですよ。音が集まっていって、ひとつになって弾ける! みたいなカタルシスがあるんです」と、これまた一筋縄じゃいかない楽曲愛を語ってくれました。
ありがとうパンダマン。またいつかどこかで会いましょう!
夜も引き続き、取材を続けます。
2日目のホワイトステージで会ったのは…、さらば青春の光の森田さん!
「サブカル系の彼女を作る」という目的のために度々フジロックを訪れては、彼女をゲットしようと奮闘する姿(そしてゲットできないで帰るまでの様子…)をリアルタイム実況するTwitterが人気の森田さん。
もはやフジロックの風物詩(?)にもなっている森田さんの“ひとりフジ参戦”に女性スタッフふたりで声をかけたものだから、一瞬逆ナンと勘違いさせてしまいました。ガッカリさせてごめんなさい。
森田さんの<この1曲!>、教えてもらってもいいですか?
「う〜ん。そうですねえ。…あっ! あの曲。山口百恵さんの『さよならの向う側』! カラオケで流すとライブ映像が出るんですけど、それがむちゃよくて。カラオケで女子に絶対歌ってもらってます」
カラオケに一緒に行く女の子はいるようで、なによりです。
お忙しいところ足止めしてすみませんでした。最後になにか言いたいことがあれば、どうぞ。
「ロゴスさん、企業案件ください!」
最後に最高のスマイルで営業をかけてきた森田さん。個人事務所社長の手腕が光っていました。
我々はさらに奥地へと。FIELD OF HEAVENへと向かいます。
FIELD OF HEAVEN
FIELD OF HEAVEN、通称「ヘブン」は自由な空気に満たされているステージ。王道のロックよりもジャズ、スカ、ダブ、レゲエといったジャンルが多く、通好みなアーティストのライブがよく行われています。
見ての通り、まったり&チルアウトな空間。
ライブペインティングなども行われます。
他と一味違うラブ&ピースな雰囲気の会場にファンも多く、「ヘブンが一番好き!」と言うフジロッカーも多数。
KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男のライブ中に目に飛び込んできたのは、おそろいのチェアを並べて楽しんでいたM家のみなさん。。
一番最初は妹さんだけがフジロックに参加していたものの、途中からお姉さんも一緒に行くようになり、姉妹からフジロックの話を聞いたお母さんが「楽しそう!」と行ってみたくなり、お父さんを誘い、最終的に家族全員でフジロックに参加するようになったそうです。
お父さんやお母さんの影響でフジロックに行くお子さんは今までたくさん会ってきたけれど、子が親を巻き込んで…という逆パターンは初めてかもしれません。なんとも素敵ないきさつです。
そんなM家の<この1曲!>は、お姉さんが大好きなケミカル・ブラザーズの『Saturate』。
「何年か前にケミカルがフジロックに来たときにこの曲をやってくれて。聴きながら『またフジロックに来たい!』と強く思ったんですよね」という思い出の曲。「いいね!」と同意するお父さん&お母さん&妹さん。仲の良さが伝わってきます。
これからも、ぜひご家族でフジロックを楽しんでくださいね。
ヘブンで奇妙礼太郎さんのライブを待つ、しばしの空き時間。
それぞれにまったりしているお客さんのなかにあって、静かにハードカバーの本を読んでいる女性が気になって仕方がありませんでした。
広告代理店に務める竜子(りゅうこ)さん。ラジオ番組のプロデュースから雑誌編集まで仕事は多岐にわたり、仕事と趣味とで月に10冊は本を読むそうです。
「外で音楽を聴きながら本を読むのが好きなんです。『フジロックになんの本を持っていこう?』って選ぶ時間も楽しくて。『なんのTシャツを着ようかな?』って選ぶときのようなワクワク感があります」と、オリジナルな楽しみ方を教えてくれました。
本のカバーは外して持参。最悪、ボロボロになったら捨てる。
そんなスタンスで持っていく本を選ぶそうです。今回のフジロックに選んだのは『三体X』。中国で大ヒットしたSF小説『三体』のスピンオフ作品です。
竜子さんの<この1曲!>は、奇妙礼太郎さんの『humming bird』。
「奇妙さんの声がすごく好きなんですけど、なかでも『humming bird』は声とギターの良さを感じる曲です。単純なラブストーリーなんだけど、歌詞が優しくてすごく好き」。
“ラブソング”を“ラブストーリー”と言うところに、竜子さんの物語への愛を感じました。
深い音楽愛を持つフジロッカーにたくさん出会えた今年のフジロック。
こちらから指定をせずともプレイリストの音楽ジャンルがいい感じにばらけたのは、「特別なフジロックから、いつものフジロック」になって、幅広い嗜好を持った人たちが再び集まったからかもしれません。
みなさん、ナイスなレコメンドをありがとうございました!
プレイリスト作りの旅はもう少し続きます。
お次は『ロゴサー』編!